高齢者の食欲低下・倦怠感、じつは活性型ビタミンD3製剤が原因かもしれない

NST・栄養管理

はじめに:施設からの「食欲がない」、どう対応してますか?

慢性期病院で働いてると、施設から「食欲がない」「元気がない」という主訴で受診してそのまま入院、というケースはよくあります。

問診と持参薬を確認すると、整形外科や内科で骨粗しょう症・骨折予防として活性型ビタミンD3製剤(エディロールやアルファカルシドールなど)を長期内服していることが多い。で、採血してみると――血清カルシウムが高い。

「骨のために飲んでた薬が食欲低下の原因だった」というのは、臨床でわりと見落とされがちなポイントです。NSTカンファレンスでもよく話題になるので、今回まとめてみました。


なぜ高齢者で高カルシウム血症が起きやすいのか

高齢者は加齢とともに腎機能が生理的に低下しています。腎機能が落ちるとカルシウムの尿中排泄が減り、血中に蓄積しやすくなる。

そこに活性型ビタミンD3製剤が加わると、腸管からのカルシウム吸収も増加するため、血清カルシウム濃度が慢性的に上がるリスクが高まります。

さらに以下の要因が重なると、リスクはぐっと上がります。

  • 悪性腫瘍の合併
  • 副甲状腺機能亢進症
  • カルシウム製剤の併用
  • 長期臥床・廃用による骨吸収亢進

高カルシウム血症のサイン、見逃してませんか?

高カルシウム血症の症状は “bones, stones, groans, moans” という英語の語呂合わせが有名ですが、高齢者の場合は非特異的な症状として現れることが多く、見落とされやすいのが実情です。

症状チェック表

上の症状チェック表を参考にしてみてください。「なんとなく元気がない」「食べなくなった」という訴えが、じつは高カルシウム血症のサインであることがあります。NSTや回診でこれらの症状を見かけたら、採血で早めに確認するのが大事です。


エディロールとアルファカルシドール、何が違う?

薬剤比較カード

使い分け早見表

2剤の比較は上の薬剤比較カードと使い分け早見表を見てもらえればひと目でわかりますが、大事なポイントだけ補足します。

どちらでも高カルシウム血症は起こりえます。 エディロールのほうがリスクは高めですが、アルファカルシドールでも腎機能低下・カルシウム製剤併用・副甲状腺機能亢進があれば普通に起こります。処方されている薬がどちらであっても、定期的な血清カルシウム測定は欠かせません。


実臨床でのチェックポイント

臨床チェックリスト

上の臨床チェックリストにある4条件がそろっている患者さんがいれば、まず補正カルシウムを確認してみてください。

補正Ca = 測定Ca + (4 − Alb) 低アルブミン血症がある高齢者では、必ず補正値で評価することを忘れずに。

高カルシウム血症が判明すれば、活性型ビタミンD3製剤の減量・中止や積極的な補液など、対応方針が変わってきます。


おわりに

「施設からの食欲低下・倦怠感」は日常茶飯事の主訴ですが、その裏に薬剤性の高カルシウム血症が隠れているケースは思ったより多いです。

骨折予防という善意の処方が、慢性的な倦怠感・食欲低下を引き起こしている可能性を、ぜひ頭の片隅に置いておいてください。投薬内容を確認して、腎機能低下があれば積極的に血清カルシウムを測る習慣が、患者さんのQOL改善につながります。


本記事は慢性期病院での臨床経験をもとに作成しています。個々の症例については主治医・担当薬剤師にご確認ください。


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