透析患者の薬が多い理由とポリファーマシー対策|薬剤師の視点から解説

NST・栄養管理
この記事でわかること
  • 透析患者の薬剤数が多い4つの医学的な理由
  • 透析で除去される薬・栄養素と補充が必要なもの
  • ポリファーマシーのリスクと薬剤師によるアプローチ

透析患者さんを日常的にみていると、ほとんどの方が多剤併用になっているのを実感します。実際、10種類以上の内服をされているケースも珍しくなく、薬剤師として「本当にこれだけ必要なのか?」と考えさせられる場面は少なくありません。

では、なぜ透析患者さんはこれほど薬が増えるのでしょうか。


薬剤数が増える主な要因

① 腎機能を薬で代替する必要がある

腎臓は老廃物排泄や電解質調整、ホルモン産生(エリスロポエチン・ビタミンD活性化など)を担っています。
透析になるとこれらの機能が失われるため、薬で補うことになります。

  • 貧血治療薬(ESA・鉄剤)
  • 骨ミネラル代謝改善薬(活性型ビタミンD、カルシウム受容体作動薬など)
  • リン吸着薬、高カリウム血症対策薬

② 透析による薬・栄養素の除去

透析では尿毒素とともに、水溶性ビタミンや一部薬剤も除去されるため、ビタミン製剤や補充療法が必要になります。これが薬剤数をさらに押し上げる一因です。

  • 水溶性ビタミン(B1・B6・B12・葉酸・ビタミンC):透析で除去されるため、専用ビタミン製剤(ネオーラルなど)で補充
  • 水溶性の薬剤(一部抗菌薬など):透析後に追加投与が必要なケースあり
  • 亜鉛:味覚障害の原因にもなるため補充薬が追加されることがある

③ 原疾患・合併症の治療

透析導入の背景は糖尿病・高血圧・動脈硬化などが多く、既往治療薬が継続されます。

  • 降圧薬の多剤併用
  • 糖尿病治療薬(インスリン含む)
  • 脂質異常症治療薬

④ 透析特有の症状コントロール

  • かゆみ(抗ヒスタミン薬)
  • 不眠(睡眠薬)
  • 透析中の血圧変動(昇圧薬)
  • 慢性疼痛(鎮痛薬)

こうした透析生活特有の症状対策で、さらに処方が追加されます。


ポリファーマシーの視点

薬剤数が増える背景には臨床的な必然性がある一方で、

  • 複数薬効の重複
  • 長期間漫然と継続される処方
  • 服薬アドヒアランスの低下
    といった問題も同時に存在します。

特に透析患者さんは、高齢者であることが多く、認知機能や身体機能の低下も重なりやすいため、ポリファーマシーによる有害事象のリスクはさらに高まります。



透析患者のポリファーマシー対策:薬剤師にできること

薬剤数が多くなる医学的な背景は理解しつつも、薬剤師として「本当に今も必要な薬か」を継続的に評価することが重要です。以下の3つのアプローチが実践的です。

🔍 ① 定期的な処方レビュー

重複薬効・漫然継続処方・腎機能低下に伴う用量調整漏れなどを確認します。透析患者では排泄経路が変わるため、通常用量では過量になる薬剤も少なくありません。

💬 ② 服薬アドヒアランスの評価

多剤併用になるほど飲み忘れや自己判断による中断が増えます。特に透析患者さんは透析日と非透析日で服薬スケジュールが異なる場合もあり、シンプルな服薬計画の提案が有効です。

🤝 ③ 多職種連携による薬剤整理

医師・看護師・管理栄養士と情報共有しながら、「今後も継続すべき薬」と「減量・中止を検討できる薬」を仕分けする視点が薬剤師の強みです。とくにNST(栄養サポートチーム)や透析カンファレンスの場が活用できます。

まとめ

透析患者さんの薬剤数が多くなるのは、腎臓機能を薬で補う必然性に加え、透析の影響や合併症治療、生活の質を保つための薬が重なるためです。
だからこそ薬剤師の役割は大きく、「必要な薬を守りながら、不要になった薬を見直す」継続的な処方レビューが求められます。透析チームの一員として、患者さんの薬の全体像を把握し、適切な薬剤管理に貢献していきましょう。


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