はじめに
「水分ってどれくらい投与すればいいの?」
栄養管理に関わると、必ず出てくる疑問ですよね。実は水分投与量の考え方にはいくつか方法があり、病態や栄養投与経路によって調整が必要です。今回はその基本をわかりやすくまとめてみました。
基本の目安
一番シンプルなのは、体重あたり30~40mL/日 で計算する方法です。
例えば体重60kgの人なら、1800~2400mLが目安になります。
もう一つの方法は、エネルギー1kcalあたり1mL とするもの。
ただしエネルギー投与量が少ない場合、この方法だと水分量が不足してしまうことがあるので注意が必要です。
体の中での水分バランス
水分は「入る量」と「出る量」がバランスしています。
- 入る量
食事:800~1000mL
飲水:500~1500mL
代謝水:250~300mL - 出る量
不感蒸泄(呼気・皮膚):900~1000mL
尿:500~1600mL
便:150~200mL
このバランスを考えると、1日に必要な水分量は 1100~2350mL程度 になります。
計算方法いろいろ
① 体重から算出(成人向けの基本)
体重(kg) × 30~40mL
② ホリディ-セガールの式(小児〜成人まで対応可)
- 最初の10kg:100mL/kg
- 次の10kg:50mL/kg
- 以降:20mL/kg
→ 例えば体重60kgなら、約2300mLになります。 - (10×100)+(10×50)+{(60-20)×20}=2300mL
③ エネルギーから算出
投与エネルギー量(kcal/日) ≒ 水分量(mL/日)
経腸栄養の注意点
経腸栄養剤には「水分100%」が入っているわけではありません。
例えば 1kcal/mL濃度の製剤では水分含有率は約85%。
濃度が高くなるほど水分は減るので、必要に応じて補液をプラスする必要があります。
病態による調整も忘れずに
- 発熱 → 体温1℃上昇ごとに必要水分は約10%増える
- 心不全や腎不全 → 水分過剰に注意
- 下痢や発汗が多いとき → 補正が必要
まとめ
- 基本は 体重あたり30~40mL/日
- 「ホリディ-セガールの式」や「1kcal=1mL」で補正もできる
- 経腸栄養剤の水分含有量は製剤ごとに違うので要チェック
- 病態や排泄量をモニタリングしながら調整することが大切
水分投与は“漫然と与える”のではなく、患者さんの状態を見ながら調整していくことがポイントです。