― 低BMI・低栄養患者をどう守るか ―
導入
透析患者の栄養管理では、日々さまざまな葛藤があります。
NSTカンファレンスの中で、
「体重が増えているので、食事の味噌汁を減らします」
といったやり取りを耳にすることも少なくありません。
その一方で、
「低BMIの患者にそこまで制限が必要なのか?」
「リハビリが進み、筋肉量が増えただけではないのか?」
と疑問を感じる場面もあります。
こうした背景から、今回は**透析患者におけるドライウエイト(Dry Weight:DW)**について、
栄養管理の視点を交えながら整理してみました。
ドライウエイト(DW)とは
ドライウエイトとは、
過剰な体液がなく、低血圧や症状を起こさずに日常生活を送れる「目標体重」
と定義されます。
具体的には、
- 低血圧、筋けいれん、強い倦怠感などの低容量症状がなく
- 浮腫、呼吸困難、血圧上昇などの体液過剰症状も最小限
となる、患者が許容できる最も低い透析後体重を指します。
多くの文献では「一度決めたら固定」ではなく、
徐々に調整しながら探っていく体重とされています。
なぜDWが重要なのか(ボリューム管理)
体液過剰は、
- 高血圧
- 左室肥大
- 心不全
- 心血管イベント・死亡リスクの増加
と強く関連しています。
そのためDW設定は、透析医療の根幹ともいえる重要な要素です。
ドライウエイト設定の実際
実臨床では、以下を総合的に評価しながらDWを決めます。
- 血圧・心拍数(透析中・透析間、降圧薬の使用状況)
- 身体所見(浮腫、頸静脈怒張、ラ音、呼吸困難)
- 透析中症状(筋けいれん、めまい、悪心、失神など)
DWに達していないと判断される場合には、
例として「体重10kgあたり0.1kg/回」など、少量ずつ除水量を増やすプロービングが行われることがあります。
客観的評価ツール(補助的)
身体診察のみでは体液過剰を見逃すこともあり、以下の補助ツールが有用です。
- BIA(生体インピーダンス法)
- BCM
- 肺エコー
ただし、
DWは炎症・栄養状態(CRP、アルブミン、筋肉量)によっても変動するため、
「固定値」ではなく柔軟なターゲットとして扱う必要があります。
最近のDWの考え方
DWは一度決めて終わりではありません。
- 体組成変化(サルコペニア・筋肉量増加)
- 栄養状態・炎症
- 心機能の変化
に応じて、定期的な見直しが求められます。
目標は
薬剤に頼りすぎず、適正な除水で血圧が安定し、症状なく生活できる体重
であり、**「攻め過ぎないDW設定」**が重要です。
低BMI・低栄養透析患者でのDWの考え方
注意すべき背景
低BMI、低アルブミン、サルコペニアは、透析患者における予後不良因子です。
体重減少そのものが死亡リスクと関連することも知られています。
また、低BMI患者でも体液過剰が隠れているケースは少なくありません。
DW設定の基本スタンス
DWは「症状なく血圧を保てる最低体重」ですが、
低BMI患者で過度にDWを下げると、
- 低血圧
- 虚血イベント
- 食欲低下 → さらなる体重減少
といった悪循環を招く可能性があります。
特に、年単位での体重減少は予後と強く関連するため、
「DW調整による体重変動」と「真の栄養低下」を区別する視点が重要です。
低BMI患者でのDW調整の実際
① 微調整が基本
- 数百g単位でDWを調整
- 透析中症状・血圧・倦怠感・浮腫を丁寧に評価
透析後の強い倦怠感や食欲低下が続く場合は、
DWを下げ過ぎている可能性も考慮します。
② 栄養・筋肉量とのセット評価
- エネルギー・蛋白摂取量
- サルコペニア・PEWの進行
- 運動療法の有無
をDW評価と同時に行うことが重要です。
長期的には、
- 栄養介入で体重・筋肉量を増やす
- それに応じてDWを緩やかに上方修正
という流れを目指します。
低BMI患者で大切な考え方
低BMI患者では、
「やや保守的なDW」+「積極的な栄養・運動介入」
を優先する姿勢が重要です。
水分制限だけに寄り過ぎず、
栄養・筋肉量を守るDW設定をNSTとして支えていく必要があります。
この考え方は、日本透析医学会のガイドラインでも示されている
「DWは固定値ではなく、状態に応じて調整すべき指標」という立場と整合します。
まとめ(NST視点)
- DWは「体重管理」ではなく全身状態の調整指標
- 低BMI患者では「除水のし過ぎ」が栄養悪化を招く
- DWは栄養・運動・体組成とセットで考える
透析室とNSTが同じ方向を向き、
「体重」ではなく「患者」を見てDWを考えることが大切だと思います。

