― 体の中の「水の行き先」を決める重要な指標 ―
血漿浸透圧とは、血漿(血液の液体成分)に含まれる溶質粒子がつくり出す浸透圧のことです。
体内の水分が「血管内・細胞外・細胞内」のどこに分布するかを決める、体液調節の要となる指標です。
浸透圧と血漿浸透圧の意味
浸透圧とは、
半透膜を隔てて濃度の異なる溶液があるとき、
水が薄い方から濃い方へ移動しようとする力を打ち消すために必要な圧力を指します。
この浸透圧を、血液のうち「血漿」だけに注目して評価したものが
血漿浸透圧です。
血漿浸透圧は、
- 血液と細胞外液
- 細胞外液と細胞内液
の間で起こる水の移動方向を決定し、体液バランスを保つ役割を担っています。
血漿浸透圧の正常値と単位
ヒトの血漿浸透圧は、通常
約280〜290 mOsm/kgH₂O
(または 285 ± 5 mOsm/L)
に厳密に保たれています。
単位の Osm(オスモル) は、
「溶液中の溶質粒子の数」を表す単位で、
その1/1000が mOsm です。
血漿浸透圧を決める主な構成因子
血漿浸透圧の大部分は、低分子の溶質によって構成されています。
主な因子は以下の3つです。
- ナトリウムなどの電解質
- ブドウ糖
- 尿素
臨床では、次の近似式がよく用いられます。
血漿浸透圧 ≒
2 × Na⁺ +(血糖 / 18)+(尿素窒素 / 2.8)
特に重要なのがナトリウム(Na⁺)で、
血漿浸透圧の約90%前後を担っています。
血漿浸透圧と血漿膠質浸透圧の違い
ここで混同されやすいのが、
血漿浸透圧と**血漿膠質浸透圧(コロイド浸透圧)**の違いです。
血漿浸透圧(総浸透圧)
- 定義:血漿中のすべての溶質による浸透圧の総和
- 主成分:ナトリウムなどの電解質が中心
- 役割:体液の濃度・水分分布を調節
- 調節機構:口渇中枢、抗利尿ホルモン(ADH)など
血漿膠質浸透圧
- 定義:血漿タンパク質(主にアルブミン)が生む浸透圧
- 値:約25 mmHgでほぼ一定
- 役割:血管内に水分を引き留め、浮腫を防ぐ
- 特徴:血圧が変動しても、膠質浸透圧は大きく変わらない
両者の関係性まとめ
- 血漿浸透圧は全体の浸透圧
- 血漿膠質浸透圧はその一部
- 血漿浸透圧の約80〜90%は
電解質による「晶質浸透圧」 - 膠質浸透圧は
血管内水分量の維持に特化した役割を持つ
臨床的に重要なポイント
血漿浸透圧のうち、
血管壁を通過しにくいタンパク質がつくる成分を
特に血漿膠質浸透圧と呼びます。
これは
- 毛細血管圧
- 膠質浸透圧
のバランスで水移動が決まる
スターリングの法則の理解に直結し、
浮腫の成因や輸液療法を考えるうえで欠かせません。
また、
- 高ナトリウム血症
- 高血糖
- 尿素上昇
などで血漿浸透圧が上昇すると、
細胞内から細胞外へ水が移動し、
脱水や意識障害のリスクが高まります。
そのため血漿浸透圧は、
輸液設計・電解質管理・意識障害評価において
非常に重要な指標となります。

