― 数字の裏側を読む ―
NST(Nutrition Support Team)の活動において、「体重」は最も頻繁に使われる指標のひとつです。
しかし一方で、最も誤解されやすい指標でもあります。
「体重が増えた=水分の摂りすぎ」
「BMIが正常=低栄養はない」
――本当にそうでしょうか?
この記事では、**NSTとして知っておきたい“体重の読み解き方”**を整理します。
BMIとは何ですか?
BMI(Body Mass Index)は、体格(カラダの大きさ)を示す指標です。
適正体重を知るための簡便な方法として広く用いられています。
計算式
BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)
疾病率が最も低いとされる理想的なBMIは「22」。
標準(理想)体重は、
22 × 身長(m) × 身長(m) で算出されます。
BMIの計算例
例① 一般的な体格
身長170cm、体重60kg
→ BMI = 60 ÷ 1.7 ÷ 1.7 = 20.76
例② マツコ・デラックス
身長180cm、体重140kg
→ BMI = 140 ÷ 1.8 ÷ 1.8 = 43.20
例③ なかやまきんに君
身長175cm、体重75kg
→ BMI = 75 ÷ 1.75 ÷ 1.75 = 24.5
👉 筋肉量が多くても、BMIは高く出る
① 体重は「1つの数字」ではない
体重は、次の要素がすべて合算された結果です。
- 水分(浮腫・胸水・腹水・点滴・除水)
- 筋肉(リハで増える/低栄養で減る)
- 脂肪
- 内容物(食事・便・尿)
- 炎症・疾患負荷による体液シフト
👉 同じ+1kgでも、意味はまったく違う
② 体重評価で最初に見るべきこと
① 測定条件
- 朝か夕か
- 透析前か後か
- 排尿・排便の前後
- 衣類・点滴の有無
👉 条件が揃っていない体重は比較しない
② 絶対値より「変化」
- 1か月で −5%
- 3〜6か月で −10%
👉 GLIM基準・低栄養評価の核心
③ DW・BMI・GLIM基準の役割の違い
| 指標 | 何を見る? | 注意点 |
|---|---|---|
| DW | 水分の適正量 | 栄養状態は直接反映しない |
| BMI | 体格(大きさ) | 中身(筋肉・水分)は不明 |
| GLIM | 低栄養の診断 | 他指標との組み合わせ必須 |
👉 目的が違う指標を混ぜない
④ 浮腫がある時の体重の考え方
- 体重↑=水分増加とは限らない
- BMIは実態より高く出やすい
- 利尿・除水で体重↓=栄養改善ではない
👉 浮腫がある体重・BMIは信用しすぎない
⑤ 透析患者のDWの本質
- DWは計算式で出す体重ではない
- 血圧・浮腫・症状・呼吸状態を総合判断
- 固定値ではなく、変動する「目標体重」
DW低下の2パターン
- 水分が抜けた(良い)
- 筋肉・栄養が落ちた(要注意)
👉 NSTは後者を見逃さない役割
⑥ リハビリ中の体重増加の正しい解釈
- 筋肉量の増加
- 筋グリコーゲン+細胞内水分の増加
- ADL・筋力改善を伴う
👉 「体重増加=水分過剰」と即断しない
⑦ 体重だけで判断すると起きる誤解
- DW安定=栄養良好 ❌
- BMI正常=低栄養なし ❌
- 体重横ばい=安心 ❌
👉 体重は「結果」であって「原因」ではない
⑧ NSTとしての正しい体重の見方(核心)
NSTでは、体重を3層構造で考えます。
- 水分:DW・浮腫・除水
- 栄養:体重変化率・摂取量・GLIM
- 機能:筋力・ADL・リハ進捗
👉 この3つをセットで評価
⑨ 体重はNSTの「共通言語」
- 看護:測定・浮腫
- 医師:除水・治療判断
- リハ:筋力・ADL
- 栄養:摂取量・低栄養評価
👉 NSTは、体重を多職種に“翻訳”する役割
⑩ 最終まとめ(Take Home Message)
体重は単なる数字ではなく、
水分・栄養・機能が混ざった情報のかたまり。
NSTは、その内訳を読み解く専門家です。
実務で使える一言
「体重は変わっていますが、
浮腫・ADL・摂取量も含めて評価したいです」


