呼吸商(RQ)とは?医療従事者が知っておきたい基礎知識

NST

病院勤務をしていると、栄養管理や呼吸リハの場面で「呼吸商(RQ:respiratory quotient)」という言葉に出会うことがあります。高校生物で習った記憶がある方も多いと思いますが、臨床ではもう少し実践的に使われます。


呼吸商の定義

呼吸商は「二酸化炭素の排出量 ÷ 酸素の消費量」で表される比率です。
RQ=CO₂排出量 / O₂消費量

通常 0.7〜1.0 の範囲に収まり、どの栄養素が主に代謝されているかを推測する指標になります。


栄養素ごとの呼吸商

  • 糖質(グルコース):RQ ≈ 1.0
    → 酸素を消費した分とほぼ同じ量の二酸化炭素を排出
  • 脂質:RQ ≈ 0.7
    → 酸素を多く消費する割に二酸化炭素の排出は少ない
  • タンパク質:RQ ≈ 0.8

つまり、RQが1に近いほど糖質利用が優位、0.7に近いほど脂質利用が優位であることを意味します。


臨床での応用

呼吸商は栄養療法や呼吸管理で役立ちます。

  • 栄養管理
    例えば慢性呼吸不全(COPD)患者に高糖質食を与えると、二酸化炭素産生が増えて換気負担が悪化することがあります。そのため脂質中心の栄養設計(呼吸商の低い栄養プラン)が推奨される場合があります。
  • 運動・代謝評価
    運動時には強度が上がるほど糖質利用が増えてRQは1.0に近づきます。安静時や低強度運動では脂肪酸利用が優位となり、RQは0.7〜0.8に低下します。

まとめ

呼吸商(RQ)は、

  • CO₂排出量 ÷ O₂消費量 で表される比率
  • 栄養素ごとに異なる値をとり、代謝の主役が糖質か脂質かを判断する目安
  • 栄養管理や呼吸リハ、運動生理学で応用可能

呼吸商を理解しておくと、「患者さんの代謝状態に合わせた栄養管理」や「呼吸負担を考慮した食事設計」がより実践的に行えるようになります。

タイトルとURLをコピーしました