高齢者で**カルバマゼピン(テグレトール)**を使用している患者さん、
低ナトリウム血症になっていませんか?
今回は、実際の症例をもとに、
- カルバマゼピンと低Na血症の関係
- 血漿浸透圧の計算方法
- SIADHとの関連
について、わかりやすく解説します。
■ 症例概要
- 80代後半・女性
- 介護施設入所中
- 三叉神経痛にてカルバマゼピン内服中
- 多剤併用あり(利尿薬含む)
主な内服薬
- ワーファリン
- 利尿薬2剤
- フェブキソスタット
- ロスバスタチン
- カルバマゼピン
- ビタミン製剤 など
高齢+多剤併用という、電解質異常を起こしやすい背景がありました。
■ 検査結果(入院時)
ある時の採血結果で、以下を認めました。
- Na:127 mEq/L(低値)
- BUN:21.5 mg/dL
- 血糖:88 mg/dL
- eGFR:約40 mL/min
中等度の低ナトリウム血症を認めています。
■ 血漿浸透圧を計算してみる
低Na血症を評価するうえで重要なのが血漿浸透圧です。
臨床でよく使われる計算式はこちら👇
血漿浸透圧(mOsm/kg)
= 2×Na + 血糖/18 + BUN/2.8
▶ 今回の症例で計算
Na:127
血糖:88
BUN:21.5
2×127 = 254
88/18 ≒ 4.9
21.5/2.8 ≒ 7.7
合計すると…
254 + 4.9 + 7.7 ≒ 267 mOsm/kg
▶ 結果
👉 約267 mOsm/kg(低張性)
正常は約280〜295なので、
低張性低Na血症であることがわかります。
これはSIADHなどと整合性のある所見です。
■ カルバマゼピンと低Na血症の関係
カルバマゼピンには、
- ADH分泌促進作用
- 腎でのADH感受性増強作用
があります。
そのため、
👉 SIADH様の低Na血症を起こしやすい
ことが知られています。
特に、
- 高齢者
- 腎機能低下
- 利尿薬併用
がある場合はリスクが高くなります。
■ ADHが高くなくてもSIADH?
本症例では、ADHは正常〜低値でした。
「ADHが高くない=SIADHではない」
と思われがちですが、実際はそうとは限りません。
カルバマゼピンの場合👇
✔ 腎の感受性が上がる
✔ ADHが正常でも水貯留が起こる
➡ “SIADH様病態”になることが多い
のが特徴です。
ここは臨床でもよく混乱しやすいポイントです。
■ 臨床経過と対応
低Na血症を認めたため、
① カルバマゼピン中止
② 原因薬剤の見直し
③ 経過観察
を行いました。
その後、三叉神経痛に対しては、
👉 プレガバリンへ切り替え
を行い、徐々に増量。
疼痛コントロールは維持でき、
全身状態も安定しました。
最終的に食事摂取も良好となり、退所となりました。
■ 今回の低Na血症の原因を整理
本症例では、複数の要因が関与していました。
| 因子 | 影響 |
|---|---|
| カルバマゼピン | 大 |
| 利尿薬併用 | 大 |
| 高齢 | 大 |
| 腎機能低下 | 中 |
👉 多因子性低Na血症
と考えられます。
■ まとめ(Take Home Message)
今回の症例から学べるポイントは以下です。
✔ 高齢者×カルバマゼピンは低Naリスクが高い
✔ 血漿浸透圧の計算は鑑別に有用
✔ ADH正常でもSIADH様病態は起こる
✔ 原因薬中止が最優先
✔ 代替薬への切り替えも重要
■ おわりに
低ナトリウム血症は、
「とりあえず様子見」
になりがちですが、背景に薬剤が隠れていることも多いです。
特にカルバマゼピンは要注意薬の一つ。
血漿浸透圧の計算をセットで考えることで、
より安全な薬物療法につながります。
日常業務の参考になれば幸いです。

