どっちを使うべきか迷うときの“判断軸”が一発で理解できるまとめ
低カリウム血症の補正に使われる代表的な注射薬が「アスパラカリウム注(L-アスパラギン酸カリウム)」と「KCL補正液(塩化カリウム)」です。
どちらも“カリウムを補う”という目的は同じですが、性格がまったく違う製剤です。
この記事では、臨床で迷わないための選び方と、両者の本質的な違いを、薬剤師目線で整理します。
✅ 結論:両者の最大の違いは「どこでカリウムを補正したいか」
- アスパラカリウム注
細胞内へスッと入りやすく、細胞内カリウム補正が得意。
⇒ アルカローシスがあるときは逆効果になり得る。 - KCL補正液
血中(細胞外)にしっかり残るので、血清Kを確実に上げたいとき向き。
⇒ 特に代謝性アルカローシス合併時に第一選択。
同じカリウムでも、“行き先”と“ふるまい”が全然違う、というのがポイントです。
1. アスパラカリウム注とは?
✅ 特徴
- 主成分:L-アスパラギン酸カリウム
- 細胞内への移行性が非常に高い
- 組織(心筋・骨格筋など)のカリウム補正に向いている
- 代謝の過程で重炭酸イオンを増やしやすい
✅ メリット・デメリット
- ✅ 細胞内Kの不足が中心のとき補正効果◎
- ❌ 代謝性アルカローシス時はNG寄り
(アルカローシスを悪化させる可能性)
✅ 使用しやすい場面
- アルカローシスがない低K血症
- 組織へのK取り込み低下が疑われるとき
- ゆるやかなカリウム補正をしたいとき
2. KCL補正液とは?
✅ 特徴
- 主成分:塩化カリウム
- 血中に留まりやすく即効性が高い
- 細胞内移行はアスパラカリウムより弱い
- 代謝性アルカローシスでは第一選択
✅ メリット・デメリット
- ✅ 血清Kを確実に上げたいとき最強
- ✅ アルカローシス時は迷わずコレ
- ❌ 急速投与で高K血症リスクが高め
- ❌ 投与速度・濃度上限の管理が厳密
※ 黄色着色(注意喚起)がある製剤が多いのも特徴。
3. 血中動態の違いをざっくり整理
| 比較ポイント | アスパラカリウム注 | KCL補正液 |
|---|---|---|
| 血中K上昇のスピード | ゆるやか | 速い |
| 細胞内移行性 | 非常に高い | 中等度 |
| 補正しやすい場所 | 細胞内 | 血中 |
| アルカローシスへの相性 | 悪い | 良い |
| 製剤の色 | 無色透明 | 黄澄色 |
アスパラギン酸は赤血球モデルの研究でも「Kを細胞内へ運ぶ力が強い」と確認されており、生体利用率が高い点が特徴です。
一方、KCLは代謝されず“そのままカリウムとして存在する”ため、血中Kを上げる力がダイレクト。
だからこそ投与速度には最大限の注意が必要になります。
4. 臨床での選び分け(実践向け)
✅ 代謝性アルカローシス+低K
→ KCL一択でOK
✅ 血清Kが低いが、アルカローシスではない
→ どちらでも可(目的に応じて選択)
・細胞内Kの補正をしたい → アスパラカリウム
・外液Kをしっかり上げたい → KCL
✅ むやみにワンショット静注はNG
どちらも高K血症のリスクがあるから、原則点滴希釈・ゆっくり投与。
5. まとめ:似てるようで“役割が違う2人”
アスパラカリウム注は**「細胞内に届けるタイプ」。
KCL補正液は「血中濃度をしっかり上げるタイプ」**。
どちらが優れているかではなく、
**「患者の状態に合うほうを選ぶ」**のが臨床での正解になります。

