みなさんの周りでも、高齢の方が「胃薬(PPIやH2ブロッカー)」を長く飲んでいる場面をよく見かけませんか?
実は高齢者にこうした胃酸分泌抑制薬が処方されることは珍しくなく、その背景にはいくつかの理由があります。
高齢者に胃薬が多い理由
1. 胃腸疾患が増える
加齢や生活習慣の影響で、胃潰瘍・胃炎・逆流性食道炎などの消化器疾患が増えてきます。
過去に潰瘍や逆流性食道炎を経験した方は、再発予防のために長期処方が続くケースもあります。
2. 薬の副作用から守るため
高齢者は関節痛や心臓病などの治療で**NSAIDs(痛み止め)や抗血小板薬(バイアスピリンなど)**を使うことが多く、これらは胃を荒らしやすい薬です。
そのため「予防的に胃薬を一緒に飲む」ことが推奨されているのです。
3. 薬の数が多い(ポリファーマシー)
高齢になると、複数の病気で多くの薬を服用するケースが増えます。薬同士の影響で胃が荒れやすくなり、その結果として胃薬が「セット」で処方されがちです。
4. 医療現場の習慣
症状がなくても「念のため」で続けられることもあり、気づけば何年も飲み続けているケースも少なくありません。
長期使用で気をつけたいリスク
便利な薬ですが、長期間の使用には注意点もあります。
リスク | 具体的な内容 |
---|---|
栄養吸収の低下 | 鉄・カルシウム・ビタミンB12不足 → 貧血や骨粗しょう症 |
骨折リスク | 特にPPIで骨密度が低下しやすい |
感染症 | 胃酸が減ることで腸炎・肺炎・食中毒のリスク増加 |
腸内環境の変化 | 下痢や便秘、腸内細菌バランスの乱れ |
腎機能障害 | PPI長期使用で慢性腎障害のリスクが報告 |
精神神経症状 | H2ブロッカーでせん妄や認知機能低下の可能性 |
どう付き合うべき?
- 定期的に必要性をチェックすることが大事
→ 医師と相談し、症状が落ち着いていれば減薬や中止も選択肢に。 - 栄養状態や骨の健康を意識する
→ 血液検査でビタミンや鉄分を確認、骨粗しょう症予防も並行して考える。 - 「飲みっぱなし」にならないように注意
→ 長く続けるほどリスクが増えるので、定期的に見直すことが安心につながります。
まとめ
高齢者に胃薬が多いのは、病気や薬の影響で**「胃を守る必要性が高いから」です。
一方で、長期服用は「骨折・感染・栄養障害」などのリスク**があるため、定期的な評価と見直しが欠かせません。
胃薬は「一生飲み続ける薬」ではなく、あくまで「必要なときに使う薬」。
飲み続けている方は、ぜひ一度主治医に「まだ必要ですか?」と確認してみることをおすすめします。